パチンコ業界は日本の代表的な娯楽産業であり、2020年時点で市場規模は約14.6兆円と推定されています。粗利(利益ベース)に換算すると、このうち約2.35兆円に相当します。
ただし、ピーク期(2005年)には市場規模が約35兆円に達していたとされ、ピーク時と比べると現在は半分以下に縮小しています。
📉 市場縮小の大きな要因
1. 店舗数・台数の減少
全国のホール数は、2010年代以降持続的に減少。2024年末には約6,706店まで減少し、2020年の9,035店から3割以上削減。設置台数も、パチンコが2000千台→約1,969千台、パチスロが約1,572千台→1,355千台と減少傾向。
ただし、1店舗あたりの平均設置台数は、約378台(2012年)→約465台(2022年)へと増加し、大型店への集約化が進行しています。
2. 新型コロナウイルスの影響
2019年から2020年にかけてのコロナ禍で店舗営業が制限され、売上は大幅に下降し、その後も回復が緩やかだったものの、2021年〜22年は若干持ち直しの兆しが見えています 。
3. 規制・若者層の減少
遊技機に対する依存症対策や規則改正、警察当局の介入などにより、娯楽性が抑制される一方、若年層のパチンコ離れや、オンラインゲーム・カジノなど競合娯楽の登場も影響。
📊 売上・粗利の推移(近年概観)
年度 | 売上規模 | 粗利規模 |
---|---|---|
2020 | 約14.6兆円 | 約2.35兆円 |
2021 | 約14.6兆円(微増/横ばい) | 約2.39兆円 |
2022 | 約14兆〜15兆円(若干回復) | パチンコ:1.52兆円/パチスロ:0.86兆円(粗利合計約2.38兆円) |
2023 | 設置台数・ホール数は継続して減少中 |
粗利ベースでは、約2.3兆~2.4兆円で推移しており、売上総額のうち15〜17%程度が純利益に相当する構造です。
💡 新たな潮流:スマート遊技機の進展
2022年以降、デジタル化を進めた「スマートパチスロ」「スマートパチンコ(スマスロ/スマパチ)」が登場。スマスロは、メダル不要でタッチレスに遊べる新機軸で、導入によりパチスロ市場の回復を牽引しています。
一方、スマパチはまだ浸透初期ながら、デジタル演出強化や設備投資により今後の注目領域です 。
🔍 最新の業況感と今後の見通し
- 法人数・業界構造の変化:2024年の経営法人数は約1,201社と10%減、2015年比では半減 。
- 景況感の改善:2025年4月発表の業況指数は、-12.6 → +4.9へ回復傾向も、不安定。
- 稼働率の課題:パチンコ稼働感は依然低調、水準的にはマイナス圏だが緩やかな回復基調
🔮 結び:構造的変化の中での再生なるか
パチンコ業界はピーク期比で約半減したものの、依然として年間売上14兆円超・粗利2.4兆円規模と巨大です。スマート遊技機という新潮流に加え、大型店舗への集約、コロナ後の回帰、設備刷新などが回復のキーとなります。
一方、若年層離れや規制の影響、オンラインエンタメとの競争は依然強力な逆風。今後は、スマート化に加え、イベントやキャンペーン、新規顧客開拓など一層のマーケティング強化と、依存防止策の徹底も不可欠です。
国内娯楽市場において、競合が激化する中、規模縮小局面から「質の転換」を果たし、いかに業態を再定義できるかが、業界の生き残りを左右すると言えるでしょう。